テーマ:野口忠男

私の聖書物語 2    野口忠男

短編小説 私の聖書物語・2 サマリアの女 野口忠男  ローマ皇帝テベリュスの治世十三年。  中東のサマリア地方、スカルの町のはずれ。  暗い家の中で女は、ゆっくりと石臼を挽いていた。挽いているのは大麦で、それは今朝暗いうちに出ていった男が女のために一袋置いていったものである。 (これで七日はしのげる……)  女はやもめ…
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小説「門」について 野口忠男

小説「門」について ―わたしの漱石ノートより― 野口忠男  江藤淳を始めとして、多くの評論家が、漱石の数ある作品の中で、「門」は失敗作であると断じている。だが果たしてそうであろうか。少なくとも、当の漱石自身は失敗作だとはどこにも記してはいない。  ところで、この作品で作者は一体何を書こうとしたのだろうか。  明治四十一年(一…
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私の聖書物語 ニコデモ 野口忠男

    私の聖書物語     ニコデモ     野口忠男  時は、ローマ皇帝テベリュウスの治世の頃。  春の季節とはいえ、中東地方、エルサレムでも午後六時を過ぎると、夕闇が訪れる。  城内の富裕層が住むこの辺りでは、道路にでると、高い塀に遮られて暗さを増し、人の顔も見えなくなる。  ニコデモは、人目に付かないように粗末な外套を…
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小説「こころ」について  野口忠男

       小説「こころ」について       ―わたしの漱石ノートより―       野口忠男  「こころ」は、夏目漱石の小説の中で、作者の心の暗部をあらわしたものとしては最も高い位置にある作品と思われる。  作者自身の心の不安は、「三四郎」「それから」「門」「行人」と書き進むにつれ、明治、大正の日本社会の近代化への歩みと逆…
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トロさんがいる   野口忠男

     短編      トロさんがいる                  野口忠男 2005年度エッセイ賞優秀賞 「トロちゃん、あなたお見合いしなさい」 大学時代の先輩でもあり、親友でもあるKさんからこう切り出されて、敏子は、一瞬、言葉を失った。 「冗談言わないでよ、K。わたしには付き合っている人がいるのよ。知ってるでしょう…
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辻先生のこと   野口忠男

エッセイ 辻先生のこと 野口忠男 「自分には師はない。この世で出会うすべての人、すべてのものが師である」  たしか、宮本武蔵がこのようなことを述べていたと思うが、私にも、残念ながら、恩師と呼べるような、特別に薫陶を受けた方はいない。しかし、幸いなことに、この方からは大切なことを教わったと思える人は何人かいる。辻清先生もその一人…
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ある記憶  野口忠男

短編 ある記憶 野口忠男 「昔通った道を歩いてみようか……」  谷村は、大船駅をおりると、路線バスを利用しないで、学校までの道を歩いて行こうと心に決めた。山の上の学校まで歩いて三十分 の道程である。  駅の周りの様子はすっかり変わっていた。 西口には、新しい階段が造られていて、道路の反対側にも降りられるようになっていた。…
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男はつらいよ・ふーてんの寅  野口忠男

エッセイ 男はつらいよ・ふーてんの寅 野口忠男 06年ムービーエッセイ賞佳作 わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。 帝釈天で産湯をつかいました。 姓は車、名は寅次郎、人呼んでふーてんの寅と発します。  これは、映画「男はつらいよ」の冒頭シーンで、渥美清の寅さんが必ず語るセリフです。  ところで、数ある寅さん映画の中で、…
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エッセイ  旅  野口忠男

エッセイ  旅 野口忠男 「このご計画ですと、費用も大分かかりますし、日数も一日か二日余分になると思いますが……」 それでもいいのかという顔で係の女の子は、私の方を見ずに妻に声をかけた。 「それでも、決めたようにしたいんでしょう」 妻が私の顔を見て言った。 「ああ」 私も女の子の方を見ないで、妻に答えた。 ポスターには、にっ…
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山崎先生へ  野口忠男

エッセイ 山崎先生へ  野口忠男 どうぞ十分にご養生なさって一日も早く皿皿にもどってきて下さい。 先生に何か書きなさい、という依頼がありましたので、思いついたことをとりとめなく書きます。 世を震撼させた神戸連続殺人事件とオウム事件では、 先生が「少年事件ブック」で書かれた酒鬼薔薇聖斗論とオウム真理教論が核心をついています。 …
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