テーマ:二松学舎大学
保坂双葉
二松学舎大学 211A1135
千恵子 あ、ここにいたの。
裕子 ん?
千恵子 咲姉ちゃん探してたよ。
裕子 そう。
千恵子 うん。
裕子 なんで。
千恵子 さあ。
裕子 ふうん。
千恵子 どしたの。
裕子 なにが?
千恵子 母さんのベットで。
裕子 …
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「痞え(つかえ)」
甲斐菜摘
二松学舎大学211B2021
女 ここだけ、どうしても落ちない。
男 どうした?
女 絵の具がここに。ほら。
男 大分派手に付けたね。
女 わざとじゃないの。
男 よくないね。
女 嫌な色してる。
男 それで絵を描いたの?
女 違う。あれ見て。
男 な…
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「屋根」
御手洗舞香
二松学舎大学 211A1146
女 ねえ、あそこに何が見える?
男 どこ?
女 あそこ。あの、山がたくさんあるところ。
男 山が見えるよ。
女 どこに?
男 あそこ。山がたくさん見えるところさ。
女 他には。
男 え。
女 他には何が見えるの?
男 ……家…
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「世界一おいしいもの」
佐藤友佳
二松学舎大学 212A1259
男と女が、メニュー表を見ながら、白いテーブルに向かい合って座っている。
男 たくさんあるね。
女 ね。
男 どれにしよう。
女 どうしよう。
男 何が食べたい?
女 んー、なんでも。
男 なんでも?
…
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「たばこと蛇口」
佐々木峻
二松学舎大学 212A1256
男1 出なかった。
男2 何件目。
男1 3件目。
男2 この時間だからな。
男1 火ある。
男2 マッチ、ライター。
男1 ライター。
男2 ほれ。
…
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短編
ある親子(仮題)
佐々木太一
二松學舍大学 212B2229
私たち親子は呪われた時代に生きてしまいました。
貧しい生活の中で図らずも産んでしまった子は身体も弱く、この過酷な環境で生きていくのは難しいでしょう。
しかもこの街で最近は何やら不気味な、風邪に似た病がはやっているそうです。
私に…
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短編
私の妻
木村昭仁
二松学舎大学 213A1063
私はドーナツを揚げていた。
ぷつぷつと油が弾けるのを見ていたら、妻の言葉を思い出した。
最初に強火で、一度下げて、最後にまた強火。
新しいことを覚えられなくなった妻だが、昔のことはよく覚えていた。
一緒に登った山の名前を妻はずらずらと並べた。
…
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「メ眼」
岬文彦
二松学舎大学
※私の講義を受けていた学生の小短編集です。
自慢ではありませんが、私は素晴らしい学生にけっこう恵まれています。
希望をくれます。お時間のある時にご一読いただけると幸いです。
【収録話】蛇を踏む/悪夢/死ねばいいのにね/宇宙の子
http://humico.t…
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短編
トラとわたし
植田小百合
二松學舍大学 213A1025
私はとある場所に向かっていた。
坂を登り、人ごみに紛れる。
曲芸師の周りを人々が囲んでいた。横目でそれを見る。
しかし、私の足は動きをやめない。ただ真っ直ぐに進んで行く。
大きな広場には一人の男が立っていた。私はその男に手を振った…
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短編
月逢(つきあい)
田中雄太
二松学舎大学 213A1276
教室中にチャイムが鳴り響いた。
その音は全身に共鳴して、痺れるみたいだった。
やがて力が入らなくなり、握っていた手紙はぽとりと床に落ちた。
視界は彩度を失くした。
ついさっきまで喧しく鼓動していた心臓が、今は止まってしまったみたいに静か…
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短編 「無題」
鈴木里歩二松学舎大学 (213A11088)
金曜夜の駅前は賑わっていた。
飲み会へ向かう会社員の集団に、合コンらしき学生のグループ、
これからデートらしいカップルなど。様々なタイプの人で溢れかえっている。
そんな中を、人と人の隙間を縫うようにして歩く一人の男がいた。
男はスーツの…
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こんな夢を見た
坂下尚香
二松学舎大学 213A1089
こんな夢を見た。
温かい水の中は、薄暗いけれどハッキリとものが見えた。ちょうど青と紫の真ん中くらいの色をした暗やみが、わたしをつつんでいた。自分の手足がなんだかぼんやりと光っているようだった。きっと夜なのだ、とわたしは思った。水の中で口をぱくぱく…
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こんな夢を見た
田中 雄太
二松学舎大学 213A1276
こんな夢を見た。
ぬかるむ斜面を踏ん張りながら歩いている。
気付けば腕も足も傷だらけで、擦りむいた膝がじくじくと痛んだ。
降りしきる雨が荷物を濡らして、冷たく重かった。
いくらか中身を置いていこうと思い、荷物を下ろした。
鞄を探…
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本当の表現とは何か
佐々木峻 (二松学舎大学)
「本当に表現する」ということは湧き出るという感覚に近いと思います。
生むより生まれるといったような受け身的な意味が強いと思います。
この感覚に沿うと客や儲けを意識して作られた作品は
「本当に表現する」ということではないと思います。
「本当の表現」で生…
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そこはとてもきれいな場所だった
中嶋徹治
二松学舎大学 212A1287
そこはとてもきれいな場所だった。
木々が茂り、黄色い小さな花が咲いていた。鳥が鳴いていた。虫も鳴いていた。
空は、暗かった。
その小さくきれいな丘に、男が立っていた。色のあふれるその場所に、明確な輪郭を持った黒いスーツを着た男は…
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傘
中嶋徹治
二松学舎大学 212A1287
そこに、男がいた。
まわりは、水滴とそれがぶつかりはじける音であふれていた。男は、傘をさしていた。男のそばには、隅の茶色く汚れた、時刻表が立っていた。背後では古いベンチが雨に打ち付けられていた。
男は少し濡れた袖を、腕を伸ばすことで少しまくって、空と似た灰…
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こんな夢を見た
中嶋徹治
二松学舎大学 212A1287
こんな夢を見た。
道を歩いていた。あたりはうす暗く、街灯が少ない。夜風が心地よい夜だった。点々と植えられた街路樹が、風がそよぐたびに凪いでいた。
見たことのない場所だった。生まれは新宿だ。ふるさとというわけでもない。とにかく、覚えのない場所だ…
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でいだらぼっち
深沢美早季
(二松学舎大学文学部 211A1131)
そのふっくらと膨らんだ顔が現れてから何日経ったのだろうと指を折って数えてみたが、いつからそこに出現したのかすっかり忘れてしまった。カレンダーなり手帳なりに書き込むような自分ではなかったし、そのことはさほど重要でない。
家の中から雑草だら…
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こんな夢を見た
深沢美早季
(二松学舎大学文学部 211A1131)
こんな夢を見た。
自宅の一階の居間で顔を真っ青にさせて股を開き座り込んでいる。スポンと軽快に膣から飛び出した小魚をキャッチして座卓の上に置きすぐさま迎え受ける準備をした。スポン。また出た。
痛みは全くない。直視できずとも体内から産…
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水槽
佐藤一子(文学部国文学科二年)
ちゃぷん、と水が跳ねる音を立てながら、水色の浴衣を着た小さな姿が前を歩いている。手には、頼りなさ気なビニール袋が揺れる。中には、小さな金魚が三匹。赤いのが二匹と、オレンジ色のが一匹。
「お兄ちゃん、水槽に入れよう!」
「あの水槽に金魚三匹は大きすぎるよ。金魚鉢っても…
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幸福論破
佐藤一子(文学部国文学科二年)
「しあわせかい?」
小高い丘の上、遠くに家々が小さく見え、近くに生い茂った緑が広がる。ぼんやりとその風景を眺めていたら、声をかけられた。
「なんだって?」
「しあわせか、と、聞いたんだ」
「しあわせ、ねぇ」
しあわせ、幸せ。辛い、という字に一本足したら、幸せ…
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カギマニア
佐藤一子(文学部国文学科二年)
半分欠けた月が暗い空で淡く輝く、人がいない夜中の住宅街。静かなその街を、少女が一人、早足で歩いていた。人が寝静まった街は薄暗く、存在を主張する街灯がやけに明るくて、不気味さを感じさせていた。
――早く帰りたい。少女、間宮凛は、ただそれだけを思って足…
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無題
水野俊 (二松学舎大学)
男1 この道はどこまで続いていると思う?
男2 さあ、どこまでだろうな。
男1 …。
男2 さっきからこの会話ばっかだな。
男1 ほかに話すこともないしな。
男2 なにかあるだろ。
男1 たとえば?
男2 この道はどこまで続いているかとか。
男1 同じだろう。
男2 同じだな。
男1 ほかには?…
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詩
この地球(ほし)に生まれた私
根本麻衣 210A1277
広い 広い空
空は どこまでも続いている
空は どこまでも青く澄みきっている
飛行機雲が うっすらとのびた
鳥たちが 行きすぎた
太陽が ギラギラと照りつけた
大きい 大きい海
海は どこまでも広がっている
海は どこまでも轟いている
砂浜で 波がおしては返し …
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詩
砂時計
根本紗都望 209A1246
人の目が怖いと思ったことがありますか
道を歩く君の足が止まった
笑い声が怖いと思ったことがありますか
道に立つ君は遠い空を見上げた
人の心は嘘でできていると思ったことがありますか
遠い空が君の心に雨を降らせた
あなたの心に虹がかかる日はいつになるのでしょうか
君の隣に…
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警察を呼べ
吉田晃史 206A1327
警察を呼べ
警察を呼べ
警察を呼んで現時検証しろ
昨日の夜になにがあったのか
警察を呼べ
警察を呼べ
警察を呼んで一つひとつ調べろ
昨日の夜 ぼくが何を言ったのか
記憶にないのは何故だ
警察を呼んで調べてもらおう
どうしてこんなに頭が痛いのか
どうしてこんなに部屋中が散らかっているのか…
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詩
いつか
(匿名希望)
いつの日かあなたは私を忘れてしまうだろう
いつの日かあなたが私を忘れてしまうのは
私にとってそれはそれは辛いことです
いつの日かあなたが私を忘れてしまうころ
いつの日か私もあなたを忘れてしまうだろう
私にとってそれはもっともっと辛いことです
いつの日かあなたが私を思い出してくれたなら
私にとって…
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詩
揺らいでいる
(匿名希望)
この世界は不確かだ
そんな世界から生まれたものは当然不確かだ
海も家も規律も子も
確かなものには成りえないのだ
この世界は不確かだ
そんな不確かな人間の愛情も衝動も不確かだ
持ち主のいない浮き輪のように
いつも見守ることなどできないのだ
この世界は不確かだ
それでも人間は夢を見ることをやめ…
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戯曲
ある男の大切なもの
水野俊
一
?が最初から舞台上に。
? 「みなさんこんにちは。この物語は製作者があまりにもネタに悩んだ結果。パロディな部分が多くなってしまいましたが気にしないでご覧ください。ストーリーそのものはオリジナルですのでご安心を。それではどうぞ」
暗転。
椅子を向かい合わせて佐伯と佐…
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短編小説
Un-Requted
二松学舎大学 橋田祐里
「いってきます」
アパート特有の金属性で分厚い扉を押しながら、玄関に立つエプロン姿の母に声をかけ、家を出た。
背後でガシャンという冷たい金属音を聞き、肩の通学鞄をなんとなしに掛けなおす。
外に面した廊下の、手すり越しに見える下界の景色は、朝の透明な光に照らされやけに…
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