ある願望  深谷巌

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エッセイ

ある願望

深谷巌



 福島市にはこころ温かいものが二つあるという。それは七十年来、精根込めて手入し育て上げた花の山に道をつくり、無償で開放している花見山地区の花卉農家の人々と白鳥飛来地で永年世話をしている人たちである。馴れた白鳥が人間から手渡しで餌を食べたり、飛べない白鳥と人間との触れ合いが人々に感動をあたえてきた。
 ところが昨年は鳥インフルエンザが国境を超えて流行した。国として人への伝染予防のため渡り鳥に餌づけをしないこと提唱した。この事態を受け福島市野鳥の会でも例年の白鳥の保護活動は中止となった。
 繁殖地であるシベリヤを飛び立ち長旅に疲れ落伍しそうな子白鳥を「福島に行けば親切な人が食べ物をくれるからね」励ましながら、はるばる飛んできた母白鳥もさぞかし困っているだろう。
 飛来が告げられた十一月はじめ、以前に私が飛べない白鳥「太郎」の取材をした世話人の八木さんにお会いした時「川に行きましたか」と聞くと「いやー行かない、行けない。鳥を見たら手をついて、あやまらねえどなんねえ」と涙ぐんでおられた。大袈裟な、と思ったがながらく世話をしていた人は思いが深いのだと感じつつ飛来地に行ったら先客がいて話しかけてきた。「いつもは今時八百羽の白鳥いるのに今年はいま七十羽だ、鴨も二千羽はいるのにたった三百余羽だよ」続いて「弱った白鳥を見つけると寒中でも川の中にジャブジャブ入っていって抱かかえて連れて来て介抱した八木さんも姿を見せないし淋しい」という。
 市では人が近寄らない様に飛来地の川岸に柵を作ったが、腹を空かした白鳥は餌欲しさに柵を飛び越えて人間の方に近寄って来てしまう。ある見物人は「羽のある鳥に柵を造っても無駄だ」と言っていた。この鳥インフルエンザ騒動は、人間の欲望と争いが地球規模の環境汚染を生み、やがて災いが人類にも及ぶことの兆しではないか。餌を与えられないまま鳥達は冬を過した。姿の消えた川をみて願う、「灰色をしていた子白鳥よ無事北の故郷へたどりついてくれ」と。
 何日かすぎて地元テレビに映っている八木さんがアナウンサーの問いに「白鳥にはやく人間的に接しられるようになればいい」と答えていた。以前のように鳥と人間が楽しく過せる地球になって欲しい。またそうしなければなるまい。




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