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zoom RSS 戯曲「お見送り」 保坂双葉 二松学舎大学

<<   作成日時 : 2015/02/01 21:54   >>

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保坂双葉 
二松学舎大学 211A1135 



千恵子 あ、ここにいたの。
裕子   ん?
千恵子 咲姉ちゃん探してたよ。
裕子   そう。
千恵子 うん。
裕子   なんで。
千恵子 さあ。
裕子   ふうん。
千恵子 どしたの。
裕子   なにが?
千恵子 母さんのベットで。
裕子   んー、寝てる。
千恵子 なんで。
裕子   なんでも。
千恵子 咲姉ちゃん探してるよ。
裕子   うん。
千恵子 眠いの?
裕子   これってさ。
千恵子 え?
裕子   これ。
千恵子 枕?
裕子   これ。枕カバー。
千恵子 ああ。
裕子   いい匂いする。
千恵子 へえ。
裕子   うん。
千恵子 私も。
裕子   え?
千恵子 嗅ぎたい。
裕子   ほら。
千恵子 わ…ホント。
裕子   ……。
千恵子 なんの匂いだろ。
裕子   なんかさ。
千恵子 ん?
裕子   なんか…こんな広かったっけ。
千恵子 なにが?
裕子   この家。
千恵子 あー、そう?
裕子   うんー、なんとなく。
千恵子 まあ、しょうがないんじゃない。
裕子   なにが?
千恵子 いや、お姉ちゃんたち出てって、私も一人暮らししてさ。母さんだけだったし。それに母さんももういないし。
裕子   そうね。
千恵子 うん、そりゃやっぱりねぇ。
裕子   やっぱ寂しかったかなぁ。
千恵子 母さん?
裕子   うん。
千恵子 まあねぇ。
裕子   私たち親不孝もんかな。
千恵子 裕姉ちゃんは結婚したじゃん。
裕子   えー、結局孫の顔は見せてあげられなかったし。
千恵子 あー、マゴか。
裕子   母さん見たかったよね。
千恵子 まあ、子供好きだったしね。
裕子   こどもか…。
千恵子 でも私なんか三十路でフリーターだよ。
裕子   千恵ちゃんは別にいいんだよ。
千恵子 なんで。
裕子   え、優しいし。
千恵子 なにそれ、関係ないじゃん。
裕子   別に千恵ちゃんのことは母さん心配してなかったでしょ。
千恵子 そう?
裕子   うん。私はほら、こんなんだから結婚してさ、母さんも安心しただろうけど。
千恵子 こんなんて?
裕子   んーこんな感じ?
千恵子 なにそれ。でも母さん心配はしてなかったと思うよ。私たち三人のことは。
裕子   まあ、あの人はね。
千恵子 うん。
裕子   てか千恵ちゃん毎日母さんに電話してたんだっけ。
千恵子 まあね。暇だし。
裕子   毎日毎日そんな話すことある?
千恵子 話すったってたいしたことじゃないし…。
裕子   たとえば?
千恵子 おはよーとか。
裕子   えー。
千恵子 そんなもんだよ。
裕子   つまんないの。

咲子が入ってくる。

咲子   あー、なに二人して寝てんの。探したじゃん。
千恵子 咲姉ちゃん声でかいよ。
咲子   これ、明日の母さんの納棺のだって。
千恵子 なにそれ。
咲子   お棺に一緒に入れちゃいけないものリスト。
千恵子 そんなのあるの。
裕子   見して。
咲子   なんかいっぱい書いてあったよ。
裕子   へえ。(読む)プラスチック製品、発泡スチロール、ゴム、ビニール、陶磁器…。
千恵子 そうじき?
咲子   は?
千恵子 いや、掃除機って。
裕子   違うよ。とうじき。
咲子   バカ、掃除機なんて誰が入れるの。
千恵子 なんだ。
咲子   それよりさ、補聴器どうする。
裕子   あれは…プラスチック?
咲子   やっぱダメかな。
千恵子 でも補聴器入れてあげないと、母さん向こうで不自由するよ。
咲子   だよねぇ。
千恵子 耳に詰めときゃバレないかな。
裕子   でも一緒に灰にならなかったらバレるでしょ。
千恵子 燃えないかなあ。
咲子   いやぁ、ちっちゃいし大丈夫じゃない?
裕子   まあね。
千恵子 あ、書いてあるじゃん。
咲子   ん?
千恵子 ここ。
裕子   どうしても入れたいものは火葬が終わった後、骨壺へ入れて下さい。
咲子   へえ、じゃあ心配ないね。
千恵子 明日何時?
裕子   お昼過ぎからだって。
咲子   ねえ、お腹すかない?
裕子   ん、もうこんな時間なんだ。
千恵子 わたしもお腹すいた。
裕子   そうね…何か買ってこようか。
千恵子 外寒かったよ。
咲子   あ、それならあれが食べたい。あれ。
裕子   なに?
咲子   あのー、なんだっけ。マツキヨの横の巻きずし美味しい所。
千恵子 鶴屋さん?
咲子   そうそう、鶴屋。
裕子   母さんあすこのお赤飯好きだったよね。
千恵子 お赤飯いいな。鶴屋さんのお赤飯もちもちしてて大好き。
咲子   お赤飯はダメでしょ。
千恵子 なんで?
咲子   お祝いごとじゃないんだから。
裕子   あ、そっか。
千恵子 ああ、たしかに。母さんに怒られちゃう。
裕子   それより母さんも食べたいって駄々こねそうだけどね。
千恵子 でもうちって小さい頃から普通の日でもお赤飯食べてたよね。
咲子   それはそうだけどよりによって今日食べなくても。
千恵子 まあね。
裕子   じゃあ巻き寿司買ってくる。
千恵子 ガリ貰ってきてね。
裕子   はーい。

と裕子が消えて、幕。


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